伝灯を守る

この度、「京の国登録文化財」が多数の所有者のご協力を頂き発刊の運びとなりました事に深甚より御礼申し上げます。かねてよりこの登録文化財を日々の生活の中で守り伝えていかねばならぬ方々のそれぞれが抱える諸問題を、立場を同じくするものがその解決への方法を提議し、それらを協力して実践する機関である所有者の会により実現に至りました事は、古都京都にとっても何よりのことと存じ上げます。

京は巷間「伝統の都」と称されますが、この伝統という言葉は、私は「伝灯」と申すのが本来であるように思われます。人類はこの灯、すなわち火を自由に操ることができるようになって、初めて他の動物類とは大きく進歩を遂げた史実から見て、この日を守ることこそが人類の文化保存行為の嚆矢であると存じます。ここに掲載された、先人たちが守り伝えてきたかけがえのないそれぞれの文化遺産は、まさにこの灯であり精神の光であります。皆々で工夫しあってこの灯を決して消すことなく、次の世代へこれらの素晴らしい文化遺産の伝灯(統)を守っていこうではありませんか。末尾になりましたが、多大のご支援を賜りました京都府文化財保護課はじめ関係各位に厚く御礼申し上げます。

京都府国登録文化財所有者の会 会長
武者小路千家 家元 千宗守