山城の国、横大路村庄屋
藤田家は江戸期に横大路村の草津において御所御用達の米問屋を営み、港の人足を束ね、庄屋を務めていた。屋敷地の背面は桂川と鴨川の合流点で、古来人や物の往来する港であった。菅原道真やフランシスコ・ザビエルが京を去った港であり、幕末には伏見奉行所の目が届きにくく、訳ある者が密航した港でもあった。港は「幻の浜」と呼ばれ風光明媚であったが、鳥羽伏見の戦いで街道を敗走する会津兵が捉えられ、斬首されたところでもある。大阪から草津までは百石船が上がって来て、三十石船に積み替えるか、牛車に積み替えて京を目指した。かつては堤沿いに米蔵が立ち並び、街道沿いには旅籠や飲屋が点在し、人足や舟人の嬌声が響いた。
街道より少し後退して立つ主屋は、玄関前に牛車が並び米を積み込んだ景色を今に残す。要人を迎え入れるため、正面右に路地門を設けている。剛の構えである。
十畳の座敷から八畳の仏間を臨む襖の絵は、狩野探鯨(たんげい)の作。襖は現在、京都国立博物館に所蔵されている。
登録内容
- 登録対象
- 主屋・土蔵
- 年代
- 明治9年(1876)
- 構造及び形式
- 主屋:木造平屋建、瓦葺 土蔵:土蔵造2階建、瓦葺
- 建築面積
- 主屋:169㎡ 土蔵:25㎡
- 登録の基準
- 主屋・土蔵:1
その他データ
- 所在地
- 京都市伏見区横大路草津町25-1