伊藤喜商店(旧店舗兼主屋・無量子庵)

仏亜心料理店・旅籠屋「貴匠桜」

伊藤喜商店は、兵庫県龍野の醤油を扱い、卸・小売販売を行なっていた店舗です。上棟の写真が残り、大正15年(1926)の建築であることが確認できます。大工棟梁、好本治郎と副棟梁、中村五三郎の仕事であることが判明しています。

平成19年(2007) にレストランとして活用するために改修が行われていますが、通り土間には当初の戸棚や竃が残り、往時の雰囲気を窺うことができます。なお、改修は復元可能な仕様で行われており、通り土間が当初の姿を留めるなど、町家の空間がよく残されています。大正から昭和初期の大型の町家建築の遺構として大変に貴重です。

裏手に建つ無量子庵は、当初伊藤家の離れとして建てられましたが、その後、僧侶が居住することとなり、無量子庵と名付けられました。旧店舗兼主屋と同時期の建物と伝えられています。屋内の座敷は、書院や数寄屋風の意匠を採用し、質の高い近代和風建築として当初の姿を今に伝えています。この他、土蔵、茶室、待合、井戸が残り、格調高い無量子庵の屋敷構えを構成しています。